投資リスクとそれを低くする3つの方法

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私たちはすぐにお金を使わずに、投資を行うのは何故でしょうか?財産を蓄え、将来に備える、というのがもっとも一般的な回答でしょうか。財産を増やす為には、貯蓄を増やす為に何かを行う必要があります。貯蓄に対して、時間をかけて行うのが、投資です。このように、投資は将来のより大きな支払いに向けて、資金を一定期間にわたり、託すことです。投資は将来の価値を得る為に、現在の価値を犠牲にすること、と定義することが出来ます。

投資についての話になると、ほとんどの人は、詳細な分析することなく、どれだけの資金を得ることが出来るか、ということに注目したり、また、投資に含まれているリスクを無視さえしたりします。投資の助言を行う者にとっては、リスクの概念をしっかりと理解し、投資を行う前、もしくは投資に関する助言を行う前に、投資家の方にリスク選好度、受け入れようとするリスクの大きさを決めていただくお手伝いをすることが必須となっております。つまり、リスクをしっかりと見てから始める、ということが投資では肝心なのです。

目次

投資リスクの定義:リスクとは?

リスクとは損失や傷害を得る可能性のことをいいます。投資においては、投資期間の終了時点における資金価値の不確実性のことを示します。投資家の方は、ダウンサイドリスクについて、より関心があります。それは損失の可能性や投資した金額が減少すること、つまりファイナンシャル・リスク(財務リスク)を意味しています。投資業界においては、ファイナンシャル・リスク(財務リスク)が存在しているということは、投資家が資金を失う可能性があり、資金の増加に完全な保証はない、ということを意味しています。

ファイナンシャル・リスク(財務リスク)は近年増加していると、しばしば思われています。1987年の株式市場の暴落、1992年のユーロからのイギリスポンドの脱退、1994年の債券市場におけるバブルの崩壊、1997年から1998年にかけてのアジア金融・経済危機、2001年の911テロ事件、そして香港を襲ったSARSや2009年の金融危機が投資家の心に印象を与えています。これがファイナンシャル・リスク(財務リスク)が増加していると感じさせることとなり、投資家の間にそういったリスクをコントロールする為の様々なテクニックや商品に関する関心が大きくなり、リスク管理を行うサービスに対する需要が大きく伸びることとなりました。

銀行口座に資産をただ置いておくだけで、そういったリスクを避けることが出来ると、間違って理解されている投資家の方も時々おられます。この方法ではまだ次に挙げる2つのリスクを負っています。

  • 銀行が倒産するかもしれないデフォルト・リスク (債務不履行のリスク)
  • 将来に物価が高くなり、預金の購買力が減少してしまうインフレーション・リスク

投資リスクの種類

一般的な投資家が投資においてさらされているリスクは数えれば切りがありません。もっとも一般的で重要なリスクを挙げておきます。

マーケット・リスク (市場リスク)

市場における基本的な需要と供給が投資物件の価格に影響を与えています。購入価格を下回る価格で資産を売らないとならない際には投資家は損失を計上することとなるリスク

個別企業リスク

市場シェアの低下や新商品開発の失敗により、企業の財務状態および株価に悪影響をもたらされるリスク

経済リスク

経済全体の落ち込みが影響されるリスク

インフレーション・リスク

投資リターンがインフレ率に見合わなく、購買力が低下するリスク

デフォルト・リスク (信用リスク)

債務者が利息もしくは元本を支払うことが出来なくなるリスク

利率リスク (価格リスク)

市場利率の変化により、満期前の債券価格には価格変動があるリスク

流動性リスク

投資物件を流動化できない、つまり売却出来ない、もしくは多くのコストを支払ってしか売却できないリスク

再投資リスク

投資期間中の配当や利子、投資満了後の資金を同程度、もしくはより高い利回りで運用できなくなるリスク

為替リスク

外貨建て投資物件を投資満了時に、母国通貨に両替する際に為替レートの変動により、不利なレートで両替をしなくてはならなくなるリスク

ソブリン・リスク

国家の政治的な不安さによって、国債などの投資物件に格下げ不安やデフォルト(債務不履行)といった好ましくない影響を受けるリスク

オペレーション・リスク

金融機関の業務オペレーション、情報システムや内部統制の不備、人的ミスなどにより直面するリスク

投資リスクとリターンのトレードオフ関係

投資を行うにあたり、リスクを避けることは出来ません。どの投資においてもリスクと期待するリターンの間にはトレードオフの関係があるのです。

一般的に、より高いリターンを望むのであれば、より高いリスクを受け入れなくてはなりません。高いリターンというのは、高い投資リスクから得られる見返りということになります。このように、投資判断を行うにあたり、投資資産によって異なるリスクとリターンについて把握しておく必要があります。

投資リスクを低くする3つの方法

投資においてリスクを低く押さえる方法がいくつかあります。それは、分散、ドルコスト平均法、そして時間です。

投資リスクを低くする3つの方法

  1. 分散:最適な投資ポートフォリオを構築しよう
  2. ドルコスト平均法:安く多く買い、高く少なく買おう
  3. 時間:投資はあせらず、じっくり、ゆっくりと。

分散:最適な投資ポートフォリオを構築しよう
分散とは、投資ポートフォリオの中で、同じ投資資産でも異なる種類、または、そもそも異なる投資資産を保有すること、異なる市場、地域や国に投資をすることを示します。分散は投資マネージャーがリターンを大きく減らすことなくリスクを低減する為の一般的な手法となっています。リターンの相関関係が低い資産を同じポートフォリオに入れることにより、リターンを犠牲にすることなく、ポートフォリオ全体のリスクを大きく押し下げることが出来ます。

では、どうして分散することにより、リスクを下げることが出来るのでしょうか?これは市場がすべて同じ動きをするわけではなく、投資資産のいくつかは市場の動きに対して異なる動きをすることによります。つまり、同一の市場または経済の動きに対して、ある投資資産は価値を落とす一方、他の投資資産は価値を上げることがある、ということです。

例えば、経済が停滞する状況下では、経済リスクを受け、株式市場が低迷しますが、同時に、低金利により債券価格の情報をもたらし、債券市場を持ち上げます。

もう一つの例では、原油価格の高騰が挙げられます。原油価格の高騰は航空会社や製造業、電力会社といった燃料に依存する会社に好ましくない影響をもたらしますが、石油会社といった会社にとっては良い影響を与えることとなります。

つまり、ポートフォリオの中に、航空会社と石油会社といった両方の株式を保有しておくことで、航空会社に対する原油高騰の悪影響を石油会社に対する好影響によって、押さえることが出来ます。

バランスのとれたポートフォリオ、つまり、様々な投資資産への投資によるリターンは、1種類だけの資産への投資に比べて、変動が少ないものになります。これは投資リスクを分散することが出来ているからです。投資を行うに際して、全ての玉子を一つのカゴだけに入れることは常々避けなくてはなりません。これは投資ファンドの基礎となる概念でもあります。

このようにポートフォリオにより多くの資産を入れることにより、ポートフォリオ全体のリスクを下げることが出来ます。

ドルコスト平均法:安く多く買い、高く少なく買おう

マーケットが底を打ったところで投資を始めることが出来ることは、投資家にとっての夢です。しかし、いつマーケットの底であるのかは、誰も知ることが出来ません。それに反して、市場が天井である時につかまってしまう人をよく見かけることが出来ます。投資家は安く買い、高く売りたいのですが、実際は、高く買い、安く売ってしまっているものなのです。

ドルコスト平均法は、投資家が適切でない時に全ての資金を市場に投入することを防ぐテクニックです。この方法では、一定間隔で、一定の金額を投資します。では、例を見てみましょう。とある投資家が株式Aに15万円投資しようとしていますが、いつが投資に適した時期であるのか定かではありません。それで、その投資家は投資資金を3万円に5等分し、毎月の中旬に株式Aを3万円づつ買うことにしました。この表では、その投資家の取引履歴を表しています。

市場価格購入株式数
1月50円600
2月60円500
3月40円750
4月25円1,200
5月50円600
購入株式数合計
1株あたり平均価格
3,650
41.1円

表からは、投資開始時期と終了時において、株式Aの価格が50円と変わりがないのにも関わらず、この投資家は平均購入価格41.1円でポートフォリオを構築しています。これは、一定額の投資を行っていることにより、株価が割安の時期に株を多めに購入、また、株価が割高の時期に株を少なめに購入することにより、より低い平均価格での買い付けを実現しているのです。

時間:投資はあせらず、じっくり、ゆっくりと。

時間は投資家が複利効果により役に立つだけではなく、投資リスクを緩衝してくれる助けにもなります。多くの株式市場では、経済発展に伴い、株価は上下の変動を伴いながらも、基本的には上昇トレンドを描いてきます。もし、不幸にもマーケットがピークを迎えていた時期に投資を始めたとしましょう。もし、その投資をマーケットが回復するまで続けていたとすれば、利益を得て、投資を終了する機会を得ることが出来ます。しかしながら、もし、短期的な投資家であれば、時間とともにマーケットが回復するのを待たずに、その投資を終了していれば、お話は全く別のものになってしまいます。

もし、投資家が十分に長い期間にわたり市場に留まることが出来れば、ほとんどの株式は元の水準に戻り、過去の高値を追い越す傾向がありますが、その待機期間は不確定なものです。例えば、日経225インデックスは、1989年に記録した最高値の38,957をまだ下回っています。これはまた分散投資の重要性を示すまた別の事例でもあります。

投資リスクを測定するプロセス

一般の投資家が実践すべきリスク管理の原則を並べてきましたが、投資の専門家の視点から見たリスク管理のプロセスについて述べていきたいと思います。リスク管理のプロセスは典型的に4つのプロセス、リスクの特定、リスクの測定、リスクの管理、リスクの監視を含みます。

リスク管理の4つのプロセス

  1. リスクの特定
  2. リスクの測定
  3. リスクの管理
  4. リスクの監視

リスクの特定

固有のリスクを特定する前には十分に事業をしっかりと理解しておく必要があります。例えば、証券会社で特定の顧客に依存する会社でれば、より分散された顧客層を持つ会社に比べて、より高い信用リスクにさられていることになります。事業の本質を適切に見極めないと、特定されたリスクを過剰、もしくは過小に見積もり、または、間違って分類してしまう恐れがあります。

リスクを特定するにあたり、事業にまつわるリスクとして、信用リスク、経済リスク、政治リスクとその影響を把握しておく必要があります。

リスクの測定

リスクを数量化するもっとも一般的な方法は、投資資産のリターン、つまり利益率の変動率(ボラティリティ)を見る方法です。変動率(ボラティリティ)は、利益率の標準偏差で量ることが出来ます。実績の変動率(ボラティリティ)は、実績の平均値の周りに、過去の利益率が個々にどれぐらい分散しているかを表します。また、その実績値をもとに、期待する利益率からの分散を計算するといった将来の見通しを見る際にも用います。

(1) 期待リターン

シナリオ分析を行い、ファンドといった投資資産の利益率の期待値を求めます。まず、相場が上昇する市場(ブル市場)、相場が安定した市場、相場が下落する市場(ベア市場)といった異なるシナリオでファンドの期待リターンを予測します。次に、各シナリオに発生する確率を割り振ります。そして、各シナリオ毎に、期待リターンに発生確率を乗じた数値を合計すると、期待リターンを求めることが出来ます。

(2) 変動率(ボラティリティ)

期待リターンを求めた後に、変動率(ボラティリティ)を求める為に標準偏差を求めます。変動率(ボラティリティ)が高ければ、その投資はリスクが高い、ということを意味します。

(3) シャープ・レシオ

上記例では、ファンドBはファンドAと比較して、より高いリターンと、同時に、より高いリスクを有しています。しかしながら、投資家としては、どちらのファンドが、同程度のリスクで、より高いリターンを得ることが出来るのか、を知りたいところです。この質問に回答するには、リスクフリーレートを上回る投資資産がリターンが1単位のリスクでどれだけあるのかを見るシャープ・レシオを見ることとなります。

ファンドBは高いリターンにも関わらず、ファンドAが同じリスクレベルではより高いリターンを出していることが分かります。

(4)その他のリスクを測定する方法

リスクを測定する方法は他にはこのような方法があります。

1:バリュー・アット・リスク (Value at Risk, VaR):

銀行や金融機関のリスク測定の業界ベンチマークとして、広く用いられています。特定の信頼水準で市場状況が変化した結果として、どれだけ投資金額に変化があるかを測定する指標です。期間1日において99%の信頼水準でVaR(バリュー・アット・リスク)が100万円といった表示を行います。これは、99%の可能性で起こりうる1日最大の損失が100万円である、ということを意味しています。

2:ストレス・テスト:

VaR(バリュー・アット・リスク)は特定の信頼水準における最大の損失を表すのみで、まだ、その金額を超える損失となる可能性があります。ストレステストは、VaR(バリュー・アット・リスク)のこの短所を補うもので、マーケットが特定の大きな動きをした際に、どのように投資のパフォーマンスが変わるかを見るものです。

3:オプション感応度:

期間や利率、変動率(ボラティリティ)といったパラメーターの変化による、オプション価格の変化を測定するものです。

4:デュレーション:

利率の変化に対する債券価格の変化のパーセントでの変化を測定するものです。

リスクの管理

事前のプロセスで特定、測定を終えたリスクを管理するには、有効なリスク管理の方針と手続きを確立する必要があります。

リスクの監視

最後にリスクを定期的に監視するプロセスが実行される必要があります。

投資リスク管理のテクニック

金融機関で行われるリスク管理の日常的なオペレーションで見られるリスク管理の実践的なテクニックをいくつか見ていきます。

リスク管理の実践的なテクニック

  1. 時価評価
  2. 限度の設定
  3. ヘッジ

時価評価

時価を反映して、担保価値の再評価を行うプロセスです。例えば、先物取引業者では顧客のポジションを定期的に評価し、メンテナンス・マージンを切っていればマージン・コールを行います。市場で大きな動きが有る時には、特に頻繁に時価評価が行われます。

限度の設定

取引限度の設定により、市場リスクを制限することが出来ます。例えば、ストップ・ロスは事前設定した損失レベルが発生した際に、ポジションを流動化することによって、損失を制限する一般的なテクニックです。

ヘッジ

先物取引において好ましくない値動きがある際には、デリバティブを用いてヘッジすることで、その影響を最小化することが出来ます。例えば、市場での短期的な下落調整を見通している際は、株式先物指数をショートすることで、ポートフォリオ価値の下落に対してヘッジすることが出来ます。株式市場が下落した際には、株式先物指数からの利益により、ポートフォリオ価値における損失を相殺することが出来ます。

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