リスクを減らし、リターンを守る分散投資という手法

卵は一つのカゴに盛るな
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投資に関する格言として、「卵は一つのカゴに盛るな」という言葉をよく耳にします。 それは、分散投資を行い、リスクをコントロールし、それにより、投資リターンにマーケットの変動が与える影響を軽減することです。しかし、何をもって分散とするのでしょうか?ただ単に複数の銘柄を適当に買えばいいというわけではなく、分散投資の方法を詳しく説明すると1冊の本ができるほどになるでしょう。簡単に言うと、時間を分散して、異なる地域、セクター、アセットクラスに、資金を投資するということになります。

まず、重要なことは、株の神様も凡人も、すべての投資リスクを完璧に回避することはできないことを理解することです。マーケットに不利なイベントが発生した場合、米国、欧州、中国、日本の投資マーケットや、株式、不動産、貴金属、暗号通貨などの資産クラスに対して、それぞれ異なる影響を与えることになります。

理論的には、マーケットの大きなイベントによって、ある資産の価値が下落するとき、その影響を受けにくい、あるいは逆にその価値が上がる資産が他に存在します。リスクファクターが異なる資産を保有することにより、良いパフォーマンスの資産で、悪いパフォーマンスの資産の損失を補うことができます。これが分散投資の基本になります。

目次

資産とセクターごとのリスクの分散

投資による潜在的リターンは、多くの場合、リスクに比例します。高いリターンを追求するためには、投資家は資金をまずは確保し、そして、不動産、株式、債券、貴金属、外国為替などの様々な資産クラスを含む、より安定したリスクとリターンを持つ資産ポートフォリオを検討し、投資する必要があります。

株式と債券の両方に投資する「ミックス・アセット・ファンド」では、前者はリスクとリターンが高く、後者は比較的安定しているのが特徴です。そのため、「ミックス・アセット・ファンド」では、その比重によってリスクのレベルが決定されます。また、リスクヘッジに用いる手段として考えられることが多い資産もおおくあります。例えば、金の価値は世界的に認められており、経済や政治が不安定な時には、金の価格が高騰する傾向があります。近年、暗号通貨は、その価値が金や米ドルに依存しないことから、ヘッジ手段としてあげられています。その価値は、金、米ドル、株式市場、原油などに影響されないということですが、これには賛否両論があるようです。

株の取引は手軽で低コストなため、株式を主な投資対象としている人も多くいます。その際には、テクノロジー、ヘルスケア、金融、建設、REIT、公益事業、エネルギーなどの様々なセクターへの分散投資を心がけしておくことが重要です。例えば、米国のテクノロジーセクターは、2020年から株価が大きく上昇しました。しかし、2022年に入ってからは荒れ模様で、以前のこのような好パフォーマンスが期待できないかもしれないと懸念する声も多くなっています。

上場投資信託 ETF で行う資産分散

ポートフォリオを構築する際に、資産同士の連動性を示す相関係数を計算して、比較的独立した動きをする資産を選ぶことによって、分散投資の目的を果たそうとする投資家も中にはいます。しかし、そのような計算の仕方がわからない人のために、マーケットには既にポートフォリオを構成した投資商品が用意されています。その代表的なものが、ETF(上場投資信託)であり、簡単に分散投資できる商品です。ETFは、主に様々な指数に連動し、様々な資産クラスをカバーしています。

例えば、VTI バンガード・トータル・ストック・マーケット ETF は、3,800以上の米国株式に分散投資しており、中小型株までバランスよく組み込まれています。VTI を保有することで、これらの企業の株式をバランスよく購入しているようなもので、米国企業に分散投資ができるのが魅力となっています。

また、様々な資産クラスを保有して、長期的の運用を行なっていくと、各資産のパフォーマンスには違いが生じてきます。そのため、適切な時期に資産のリバランス(再調整)を行う必要が出てきます。例えば、投資を始めた当初は、株式と債券の比率を 6:4 でだったとします。その後、株式のパフォーマンスが債券を上回り、比率が 8:2 となったとします。その場合、ポートフォリオのリスクに対する防御力が弱まるため、多くなった株式の持分を減らし、債券を増やす資産のリバランスが必要になるかもしれません。

投資時期によるリスクを分散

上記の資産クラスの分散によるリスク低減の他に、投資時期の分散によるリスク軽減も用いられます。これは、株式の売買のタイミングを上手くとらえることが難しいためであり、そのため、投資リスクが発生します。株式やファンドを一定額づつ毎月買い入れ、積み立てることで、投資時期を分散することができます。このドルコスト平均法を利用することで、株価を自動的に調整することができます。ただし、リスク分散の観点から、運用は長期的で行うことが重要です。

株式の毎月積立は、時間リスク分散の代表的な例といえます。リスクのバランスを取るだけでなく、コストの削減、投資パフォーマンスをモニタリングする時間と手間の削減をもたらします。また、投資初心者が規律ある投資習慣を身につけるのにも役立つメリットがあります。

毎月積立による株式投資の簡単な例

1万円の資金で、5ヶ月かけて毎月2,000円ずつ使って、マーケットに参入したとします。

積立金額株価買入株式数累積株数
12,00010200200
22,0008250450
32,00010200650
42,0008250900
52,00054001,300
  • 総投資金額: 10,000 円
  • 保有株式数: 1,300
  • 平均購入コスト: 7.69 円

1月に1万円で一気に市場に入り、5月に売れば、50%の損失となります。しかし、毎月に分けて、株式を買い付けることで、マーケットの乱高下が投資に与える影響をうまく緩和しています。また、株式市場の監視に時間をかけることなく、一度に購入した場合よりも多くの資産を手に入れることができています。

ただし、複数の株式銘柄を同時に積立購入する場合、証券会社によっては1銘柄ごとに手数料がかかります。その場合、売買手数料や配当金受取り手数料が高くなるので、ETF の毎月積立を検討するとよいでしょう。

地理的リスクの分散

地理的リスクとは、地政学的な要因による経済の混乱を指し、自然災害、気候変動、エネルギーなども関係します。例えば、宗教対立が頻発する中東は、いつ爆発するかわからない「火薬箱」と見なされています。また、北朝鮮が時折ミサイル発射実験を行えば、多くの国、特に日本や韓国のマーケットが動くことがあります。そして、英国の欧州連合(EU)離脱交渉の進展は、英ポンドや株式市場に大きな影響を与えてきました。また、超大国であるアメリカの対外政策は、しばしば株式市場の急騰急落を招いています。

外国為替市場において、スイスフランはその中立性と厳格な銀行規制から、伝統的に「リスクヘッジ通貨」とみなされてきました。日本円は、その超低金利、あるいはマイナス金利を維持しており、また、その高い流動性から、好況時には多くの人が円を借りて、他通貨建の資産を買い入れる円キャリートレードを行なっています。そして、国際的なリスクが高まると、投資家は債務の返済とリスク回避のために円へと戻すことを行います。また、世界最強の通貨である米ドルは、その強いポジションから、当然のことながらリスク回避時に選ばれる対象となります。

また、通貨以外にも、海外マーケットの株式やファンド、債券に投資して地域分散を図る人も多くいます。

しかし、海外資産への投資にあたっては、時差等によりマーケット情報の入手に時間がかかることや、為替レートや外貨換算手数料により投資コストが増加することに留意する必要があります。

なお、これらのリスク分散を考慮した場合、VT バンガード・トータル・ワールドストックETF への投資がおすすめです。

VT は FTSE オール・ワールド・インデックスをベンチマークとし、全世界で投資可能な市場時価総額の90%以上をカバー、約2,900銘柄で構成され、新興国を含む世界47カ国の株式に投資することができます。このように、VT バンガード・トータル・ワールドストックETF への投資一つで、世界の株式市場のマーケット・ポートフォリオを持ち、地理的・セクター・通貨の分散投資を実現できます。

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