海外旅行や長期滞在中に必要な現地通貨を簡単に手に入れる方法として、クレジットカードの海外キャッシングがあります。通常の両替所での外貨両替と比べて、海外ATMで現地通貨を引き出すことで、手数料を抑えつつ、便利にお金を手に入れることができます。
本記事では、海外キャッシングの詳細な使い方、メリット・デメリットを紹介します。旅行前にこの情報を知っておけば、無駄なコストを避けることができます。
海外キャッシングサービスとは?
海外キャッシングとは、クレジットカードを使って、海外のATMから直接現地通貨を引き出すサービスです。VISAやJCB、Mastercardなど、国際ブランドが付いたカードを使えば、世界中のほとんどのATMで現地通貨を引き出すことができます。
このサービスは、事前に空港の両替所などで外貨に両替しておく手間を省き、ATMさえあれば現地通貨を必要なときにすぐに引き出せる便利な方法です。
海外キャッシングのメリット
1. コストの削減
通常、空港や両替所での両替は、為替手数料や手数料が高く、非常にコストがかかります。しかし、海外ATMで現地通貨を引き出す場合、両替レートが良く、トータルの手数料も低く抑えられることが多いです。特に、クレジットカードの海外キャッシングは、他の方法に比べて手数料が安い場合があります。
2. 安全性
多額の現金を持ち歩く必要がないため、紛失や盗難のリスクを軽減できます。万が一カードが盗まれても、カード会社に連絡すれば利用停止ができ、不正利用を防ぐことができます。現金を持ち歩くリスクを減らすため、安全性が大きなメリットとなります。
3. 利便性
ATMさえあれば、24時間いつでも必要な分だけ現金を引き出せるという利便性があります。旅行中に急に現金が必要になった場合でも、すぐに引き出せるため非常に便利です。
海外キャッシングのデメリット
1. 借金となる
海外キャッシングは、基本的にクレジットカードを使った「借入」です。返済日までに金利が発生するため、注意が必要です。特に、返済を遅らせると利息がどんどん増えていくため、計画的な利用と返済が必要となります。
2. 利用前の設定
キャッシング枠は、事前にカード会社で設定しておかなければ利用できません。そのため、旅行前にカードのキャッシング枠を確認して、必要な金額を設定しておく必要があります。
3. セキュリティ
ATMでのスキミング(カード情報の盗み取り)や、カードがATMに吸い込まれるといったトラブルに遭う可能性があります。
4. 各種手数料
海外キャッシングには、ATM手数料や海外事務手数料がかかることがあります。これらの手数料はカード会社によって異なるため、利用前に確認しておくことが必要です。
5. たまに遭遇する詐欺的割高為替レートを適用してくるATM
たまにですが、詐欺的に割高なレートを提示、もしくは適用してくるATMがあり、注意が必要です。
でも、そういうATMで、うっかり高額なレートで引き出してしまわないための見分け方と回避方法はあります。しかしながら、そんな注意をしなくてはいけないというのも面倒なものですね。
海外キャッシングとクレジットカード支払いの違い
海外キャッシングとクレジットカードでの支払いは、どちらもクレジットカードを利用する点では似ていますが、いくつかの重要な違いがあります。
1. 支払い方法
- 海外キャッシング: 現地ATMで直接現金を引き出す方法。借り入れであり、利息が発生する。
- クレジットカードでの支払い: 商品やサービスを購入した際の支払い。キャッシングとは異なり、基本的には利息は発生せず、翌月の支払いが求められる。
2. 手数料
- 海外キャッシング: ATM手数料に加え、利用した金額に対して利息が発生します。繰り上げ返済で利息を軽減できるが、一定期間以上経過すると金利がかさみます。
- クレジットカードでの支払い: 基本的には海外でのショッピング手数料が2〜3%かかるものの、キャッシング手数料ほどの高金利は発生しません。
3. 利便性
- 海外キャッシング: 必要な分だけ現金を引き出せるため、現金が手に入りやすく、急な支払いに便利です。ただし、返済期限が近いと利息が高くなる可能性があります。
- クレジットカードでの支払い: 現金を持ち歩かずに済むため、セキュリティ面で安心ですが、引き出しではなく購入に使うため、現金が必要な場面では不便です。
クレジットカードで海外キャッシングする際の手数料
クレジットカードで海外キャッシングする際には、ATM手数料と利息という手数料が発生します。それぞれについて、詳しくみていきましょう。
クレジットカードの国際ブランドが定める「基準レート」に加わる手数料
海外でクレジットカードを使った際には、Visa、Mastercardといったクレジットカードの国際ブランドが定める「基準レート」で、現地通貨の金額から日本円へと両替されます。
国際ブランドが設定する為替レートは、いわゆる「ミッドマーケットレート」と呼ばれる実際の市場レートを基にしています。しかし、カード会社はこの市場レートに若干の手数料を加算します。この手数料が上乗せされることで、実際に私たちが支払う額は市場のレートよりもわずかに高くなります。
ATM手数料
まず押さえておきたい点が、ATM手数料には次の2つの種類がある、ということです。
- クレジットカード発行会社が設定するATM利用手数料(日本のクレジットカード発行会社が設定)
- ATMオーナー手数料(現地の銀行などが設定)
① クレジットカード発行会社が設定するATM利用手数料(日本のクレジットカード発行会社)
こちらは、日本のクレジットカード会社が独自に設定している手数料で、海外のATMを使ったときに加算されます。
1回あたり220〜330円程度かかるのが一般的です。
ただし、この手数料はカード会社ごとに違いがあり、まったく取らない会社もあります。
カード会社 | 海外ATM手数料 |
---|---|
アコムACマスターカード / MUFGカード / JCBカード / ジャックスカード / セディナカード | 無料 |
イオンカード / エポスカード / セゾンカード / 三井住友カード / 楽天カード | 110円 (引出金額:1万円以下) 220円 (引出金額:1万円超) |
② ATMオーナー手数料(現地の銀行などが設定)
これは、ATMを設置・管理している側(つまり現地の銀行など)が設定している手数料です。
多くのデビットカードでは、この手数料が発生します。
- タイ: 220 THB
- ベトナム: 22,000 VND 〜 3%(最低 50,000 VND)など様々
- マレーシア: 無料、10 MYR ~ 12 MYR など様々
✅ でも実は、クレジットカードのキャッシングではこの手数料が基本的にはかかりません。
なぜかというと、クレジットカードのキャッシングは「借金」として扱われるため、法律上、利息やカード会社が定めた手数料以外に追加で課金することができない、というルールがあるからだそうです。
しかしながら、ルールではそうなってはいるのですが、ATMによっては、引出し金額に合算するなどして、無理矢理請求してくることもあります。
✅ ご自身のカードの海外キャッシング手数料を、クレジットカード発行会社の公式サイトで確認
✅ よく海外に行く人は、手数料無料のカードを1枚持っておくと安心
✅ ATM画面に「この取引には〇〇円の手数料がかかります」と表示されたら、それはATMオーナー手数料
利息
クレジットカードの海外キャッシングは借り入れですので、利息がかかります。その利息は通常、年率で18%程度です。利息の計算式は次のようになります。
利息金額 = 借入金額 × 実質年率 ÷ 365 × 借入日数
例えば、外貨で5万円分を引き出し、30日後に返済した場合、利息はおおよそ740円となります。
ここでポイントになってくるのが、一部のクレジットカードでは「繰り上げ返済」ができるということ。
たとえば、セディナカードやエポスカードなどでは、ペイジーを使って早めに返済することが可能です。
✅ Pay-easy ペイジーとは?
銀行引き落としを待たずに、ネットバンキングやATMからクレジットカード会社に直接支払いできるサービスです。
ですので、引き出してすぐにペイジーで返済すれば、借入日数が短くなり、利息も大幅に抑えられます。
また、クレジットカードにより、ペイジー払いが可能になるまでの日数が異なります。ですので、利息を押さえるには、ペイジー払いがすぐに可能になるクレジットカードを選ぶことも重要になります。
クレジットカードの海外キャッシングでかかる手数料の一例
アコムACマスターカード | エポスカード | 楽天カード | ||
---|---|---|---|---|
クレジットカードで引き出した金額 | 10,000 タイバーツ | |||
現地ATMオーナー手数料 | ATMによる (基本的にはかからない) | 0 タイバーツ | 0 タイバーツ | 0 タイバーツ |
マーケットでの為替レート | 1 タイバーツ 4.5 円 | 45,000 円 | 45,000 円 | 45,000 円 |
基準レートにかかる手数料 | 約 0.5% | 225 円 | 225 円 | 225 円 |
クレカ会社設定のATM利用手数料 | カード会社による | 0 円 | 220 円 | 220 円 |
利息 | ペイジー払いが可能になる日数による | 0 円 (即時にペイジー払いが可能) | 22 円 (最短1日でペイジー払いが可能) | 670 円 (引き落としまで30日で計算) |
合計 | 45,225 円 | 45,467 円 | 46,115 円 | |
差額 | 0 円 | + 242 円 (+0.5%) | + 890 円 (+2.0%) |
海外でクレジットカード払いの際の手数料
海外でクレジットカードを使って買い物した際には、Visa、Mastercardといったクレジットカードの国際ブランドが定める「基準レート」に、三井住友カードや楽天カードといったクレジットカード発行会社が設定する「海外事務手数料」が加算された為替レートを使って、現地通貨の金額から日本円へと両替されます。
ここで使用される基準レートには、若干の手数料が加わっているため、手数料としては、基準レートにかかる手数料と、海外事務手数料の2種類の手数料がかかっていることになります。
- 国際ブランドの定める基準レートにかかる手数料
- カード発行会社が定める「海外事務手数料」
国際ブランドの定める基準レートにかかる手数料
通貨同士の交換に使われる「為替レート」は、日々の市場の動きにより常に変動しています。例えば、1米ドル=150円を超えるニュースを聞いたことがあるかもしれません。これらの為替レートは、日本銀行やその他の金融機関によって公表されています。例えば、外国為替データはインターネットで簡単にチェックすることができます。
国際ブランドが設定する為替レートは、いわゆる「ミッドマーケットレート」と呼ばれる実際の市場レートを基にしています。しかし、カード会社はこの市場レートに若干の手数料を加算します。この手数料が上乗せされることで、実際に私たちが支払う額は市場のレートよりもわずかに高くなります。
つまり、VISAやMastercard、JCBなどのクレジットカードで外貨決済を行う場合、国際ブランドが設定した為替レートで日本円に換算されますが、若干不利なレートが適用されるということです。
- https://www.visa.co.uk/support/consumer/travel-support/exchange-rate-calculator.html
- https://www.mastercard.com/global/en/personal/get-support/convert-currency.html
カード発行会社が定める「海外事務手数料」
国際ブランドの手数料とは別にかかる手数料が、カード発行会社によって課される海外事務手数料です。
楽天カードや三井住友カードといったカード発行会社は、先程述べた国際ブランドの基準レートに、さらに独自の海外事務手数料を上乗せしています。海外事務手数料は例えば「3.63%」などと表示され、これは国際ブランドの基準レートに3.63%の手数料が上乗せされることを意味します。
海外事務手数料の具体例
- 国際ブランドの基準レート(例:1ドル=150円)
- 海外事務手数料(例:3.63%)
この場合、カード発行会社が設定する海外事務手数料は、基準レートに3.63%を上乗せする形になります。したがって、1ドル=150円のレートで買い物をした場合、実際には1ドル=155.445円(150円+3.63%)で両替されることになります。
カード発行会社によって異なる海外事務手数料
海外事務手数料は、カード発行会社によって異なります。そのため、クレジットカードを選ぶ際には注意が必要です。例えば、以下のように異なる金額が設定されています
カード会社 | VISA ビザ | Mastercard マスター | JCB ジェーシービー | AMEX アメリカンエクスプレス |
---|---|---|---|---|
AMEX | – | – | – | 3.85% |
EPOS エポスカード | 3.85% | – | – | – |
セゾンカード | 3.85% | 3.85% | 3.85% | 3.85% |
三菱UFJニコス | 3.85% | 3.85% | ||
楽天カード | 3.63% | 3.63% | 3.63% | 3.63% |
DCカード | 3.63% | 3.63% | – | – |
三井住友カード | 3.63% | 3.63% | – | – |
セディナカード | 3.63% | 3.63% | 2.2% | – |
JACCSカード | 2.2% | 2.2% | 1.6% | |
エムアイカード | 2.2% | 0.275% | ||
イオンカード | 1.6% | 1.6% | 1.6% | – |
JCBカード | – | – | 1.6% | – |
このように、カード発行会社によって手数料の割合が異なるため、海外でカードを使う際にどのカードを選ぶかが非常に重要になります。
海外でのクレジットカード払いでかかる手数料の一例
料率だけではなく、金額でどれくらい手数料がかかってくるのかを、マーケットでの為替レートが 1 米ドル 150 円の時に、500 米ドルの買い物をクレジットカードでした、として計算してみましょう。
楽天カード | イオンカード | ||
---|---|---|---|
クレジットカードで買い物した金額 | 10,000 タイバーツ | ||
マーケットでの為替レート | 1 タイバーツ 4.5円 | 45,000 円 | 45,000 円 |
基準レートにかかる手数料 | 約 0.5% | 225 円 | 225 円 |
海外事務手数料 | カード会社による | 1,641 円 | 723 円 |
合計 | 46,866 円 | 45,498 円 |
例として、楽天カードとイオンカードで計算してみましたが、918 円の差が出てきました。カード発行会社によって手数料が異なるため、海外でカードを使う際にどのカードを作っていくのか、使うのかという点に注意が必要になります。
結局、海外キャッシングとクレジットカード払いはどっちがお得?
カード | 請求金額 | 差額 | |
---|---|---|---|
海外キャッシング | アコムACマスターカード | 45,225 円 | 0 円 |
エポスカード | 45,467 円 | + 242 円 (+0.5%) | |
楽天カード | 46,115 円 | + 890 円 (+2.0%) | |
海外クレジットカード払い | 楽天カード | 46,866 円 | + 1,641 円 (+3.6%) |
イオンカード | 45,498 円 | + 273 円 (+0.6%) |
先ほどまで、1万タイバーツの利用を海外キャッシングとクレジットカード払いで各々試算してきた金額をまとめてみました。このように比較してみると、アコムACマスターカードによる海外キャッシングが最もコストを抑えられており、ペイジーでの繰り上げ返済を活用すれば、ほぼ利息も発生しません。
一方で、便利に使えるクレジットカード払いですが、高い海外事務手数料によって、請求金額が高くなる結果になりがちですが、海外事務手数料が低いカードを利用できれば、海外キャッシングと遜色ないレートで利用できるようです。
まとめ
海外キャッシングは、現地通貨を引き出すための便利でコスト効率の良い方法です。ただし、利用するカードや手数料をしっかりと確認し、計画的に利用することが重要です。旅行前にキャッシング枠を設定し、繰り上げ返済を活用することで、手数料を最小限に抑えることができます。
どのカードを選ぶかは、あなたの旅行スタイルや返済方法に合わせて選ぶと良いでしょう。
海外キャッシングで気をつけるべきポイント
1. ATMの選び方
ATMを選ぶ際には、スキミングに注意しましょう。また、極悪レートのATMを避けるために、ATMの表示画面で「両替」を勧めてきたら、慎重に操作しましょう。
2. 繰り上げ返済を活用
繰り上げ返済をすることで、利息を軽減できます。特に、アコムACマスターカードやセディナカードなど、繰り上げ返済がネット上で簡単にできるカードを選ぶと便利です。