タイへの旅行や中長期滞在を計画する際、現地での決済手段をどのように準備するかは、旅の快適さとコストに直結する重要な要素です。タイ国内では、銀行口座直結のQRコード決済システム「PromptPay(プロンプトペイ)」が広く普及しており、屋台から大型商業施設にいたるまで、キャッシュレス化が進んでいます。
外国人観光客がこのPromptPayを利用するための手段として、近年いくつかの特化型ソリューションが登場しました。その一方で、海外旅行の定番である「Wise(ワイズ)」や「Revolut(レボリュート)」といったデジタル金融サービスも、手数料の低さから根強い支持を集めています。
さらに2025年から2026年にかけて、決済環境には大きな変化が起きています。日本の主要なクレジットカード会社(三井住友カードや楽天カードなど)が、海外事務手数料を3%から4%近くへと相次いで値上げしました。また、タイ国内大手の電子マネー「TrueMoney(トゥルーマネー)」では、2026年5月に海外クレジットカードの紐付け機能が終了するという大幅な仕様変更が実施されました。
このような状況下で、昨今注目を集めているのが、日本のクレジットカードからチャージして使用できるVisaプリペイドカード「IDARE(イデア)」の活用です。本記事では、PromptPay特化型ソリューション3選と、デジタル金融サービス3選の計6社を比較します。それぞれの強みと弱点を整理し、2026年のタイ滞在において損失を最小限に抑えるための最適な組み合わせを解説します。
外国人でもタイのQR決済が使える!PromptPay特化型ソリューション3選
タイの街中や屋台で日常的に使われているPromptPayは、原則として現地の銀行口座を持つ人向けのシステムです。しかし、外国人観光客でも以下のサービスを経由することで、店頭のQRコードをスキャンして支払うことが可能になります。
① TAGTHAi Easy Pay:確実性と「無料SIM特典」重視の短期旅行者向け
「TAGTHAi(タグタイ)」は、タイ国政府観光庁(TAT)などが公認・支援している観光プラットフォームアプリです。そのアプリ内で提供されている決済機能が「TAGTHAi Easy Pay」です。
利用を始めるには、タイの主要空港(スワンナプーム国際空港など)にあるカシコン銀行両替カウンターに立ち寄り、パスポートによる本人確認を行った上で、物理的な登録カードを受け取る必要があります。チャージは、そのカウンターなどで日本円などの外貨現金を渡して、タイバーツ残高としてアカウントに反映させる仕組みです。
政府公認のサービスであるため、セキュリティや信頼性が非常に高い点がメリットです。また、利用特典としてタイの通信最大手であるAISの「無料SIMカード(一定のデータ通信量付き)」が提供されることが多く、到着直後の通信環境を確保したい旅行者にとって利便性が高い仕様となっています。店頭のPromptPayの多くに対応しており、個人経営の屋台でも決済が可能です。
一方で、チャージ時に適用される為替レートは、提携先であるカシコン銀行の外国為替レートとなります。このレートは一般的なインターバンク(仲値)に比べて5%から10%ほど不利に設定されているため、実質的なコスト負担が大きくなります。また、空港などにあるカシコン銀行の物理カウンターへ立ち寄る手間が発生するため、到着時のスケジュールに余裕がない場合には不向きです。
② Moreta Pay:リモート完結&高レートだが「法人QRのみ」の割り切りが必要
「Moreta(モレタ)」は、米国登録のフィンテック企業が提供する、外国人向けのタイQR決済ソリューションです。
TAGTHAiとは異なり、すべてのアカウント開設手続きがアプリ内でリモート完結します。パスポートによる本人確認(KYC)をオンラインで行い、日本のクレジットカードやデビットカード、または海外銀行送金を利用してチャージを行います。
最大のメリットは、適用される為替レートがインターバンク(仲値)ベースの非常に有利なレートである点です。さらに、空港のブースに並ぶ必要がなく、日本を出国する前や現地到着後のホテルからでもすぐに利用を開始できる手軽さがあります。
ただし、注意すべき点として、決済ごとに1.5%のシステム手数料が発生します。また、タイのPromptPayには「個人用QR」と「法人用QR(店舗用)」の2種類がありますが、Moreta Payは原則として法人用QRにしか対応していません。そのため、個人経営の小さな屋台や、移動式の物販では決済がエラーになるケースが多く、利用できる場所が中規模以上の店舗に限られるという割り切りが必要です。
③ TrueMoney:タイ最大手だが【2026年5月海外クレカ終了】で観光客には逆風
「TrueMoney(トゥルーマネー)」は、タイの巨大財閥CPグループが運営する、国内シェア最大の電子マネーサービスです。
コンビニ大手の7-Eleven(セブン-イレブン)をはじめ、タイ国内のほぼすべての商業施設や個人商店で利用できる強固なネットワークを持っています。
以前は、日本のクレジットカード(VisaやMastercardなど)をアプリに紐付けることで、事前の残高チャージなしでスムーズに決済ができていました。しかし、2026年5月に海外クレジットカードの紐付け機能が完全に終了しました。これにより、日本のカードから直接支払うことができなくなりました。
現在、外国人観光客がTrueMoneyを利用する場合、タイ国内の7-Elevenの店頭に赴き、レジで現金を支払って残高をチャージする方式が主となっています。また、マネーロンダリング防止の観点から、外国人アカウントに対する本人確認の手順も高度化しており、設定時にエラーが発生しやすい傾向にあります。長期滞在のビザやタイの運転免許証などで本人確認しないと、利用できる機能に一部制限がかかってしまいます。チャージの手間と利便性を考慮すると、短期の観光客にとって積極的に選ぶ理由は薄れてしまったのが現状です。
為替レート最強&ポイ活ルート!海外旅行の定番・デジタル金融サービス3選
多くの旅行情報では「タイではPromptPayが必須である」という点が強調されがちです。しかし、実際のタイの都市部(バンコクやチェンマイなど)においては、ショッピングモール、スーパーマーケット、中規模以上の飲食店、そして配車アプリの「Grab(グラブ)」や「Bolt(ボルト)」において、通常のVisaやMastercardによるブランド決済が問題なく導入されています。
そのため、為替手数料が低いデジタル金融サービスや、ポイント還元を受けられるカードをメインに据えるアプローチは、トータルの旅行支出を抑える上で非常に有効な手段となります。
④ Wise(ワイズ):ミッドマーケットレートで最安!ATM出金やGrab連携に最適
「Wise(ワイズ)」は、世界中で利用されているマルチカレンシー(多通貨)口座サービスです。専用のVisaデビットカードを発行することで、タイでも高いコストパフォーマンスを発揮します。
Wiseの最大の特徴は、為替手数料に隠れコスト(マークアップ)がなく、純粋な仲値である「ミッドマーケットレート」で両替が行われる点です。数ある決済手段の中で、最も実質的な為替コストを低く抑えることができます。
店頭に置かれているPromptPayのQRコードをアプリでスキャンして支払う機能には対応していません。しかし、タイ旅行に欠かせない配車アプリ「Grab」の決済カードとして登録することで、移動のたびに最安のレートで自動決済が行われます。さらに、タイ国内のATM(カシコン銀行、バンコク銀行など)で現地通貨(タイバーツ)の現金を引き出す際にも、この好レートが適用されます。月2回、合計3万円相当までのATM出金手数料が無料(※タイ現地ATM側の手数料は別途発生)となるため、少額の現金を確保する手段としても適しています。
上記は日本やアメリカといったタイ以外で登録しているWISEアカウントを想定しています。一方、タイで開設したWISEアカウントは使い勝手は変わってしまう点には注意が必要です。

⑤ Revolut(レボリュート):為替管理がアプリで完結!週末の手数料にだけ注意
「Revolut(レボリュート)」は、英国発のフィンテック企業が提供する次世代型の金融アプリおよびデビットカードです。
アプリ内で瞬時に日本円からタイバーツへの両替を行うことができ、バーツ残高としてカード内に保持しておくことが可能です。Wiseと同様に、一般的な銀行やクレジットカードに比べて有利なインターバンク(仲値)レートが適用されます。日本のカードや銀行口座からアプリへ即座にチャージできるため、旅行中のお金の管理がアプリ1つで完結します。
Revolutを利用する上で把握しておくべきなのは、「週末(土日)の手数料」です。外国為替市場が閉まるニューヨーク時間の金曜日夕方から日曜日夜間にかけて、バーツへの両替や、バーツ残高がない状態での決済を行うと、一定の変動手数料(通常1%前後)が上乗せされます。そのため、週末に滞在・買い物をする予定がある場合は、市場が開いている平日のうちにアプリ内でまとまった金額をあらかじめバーツに両替しておくという対策が必要です。なお、Wiseと同様に店頭のPromptPayスキャン支払いには非対応です。
⑥ IDARE(イデア):日本のクレカからチャージ可能!ポイント二重取りの裏ワザ
「IDARE(イデア)」は、スマートフォン上で発行・管理できるVisaブランドのプリペイドカードサービスです。物理カードを発行することで、海外のVisa加盟店でも利用可能になります。
IDAREの最大の特徴は、日本のクレジットカード(三井住友カード プラチナプリファードなどの高還元カードを含む)から残高をチャージして利用できる点です。これにより、チャージ元のクレジットカード側でポイントや決済実績(クレカ修行)を維持しつつ、IDAREの決済枠として海外で使用するという「ポイントの二重取り・維持」が可能になります。昨今の日本のクレカによる海外事務手数料値上げ(3〜4%への引き上げ)に対する回避策として、ポイ活層から注目されています。適用される為替レートはVisaの基準レートとなります。
ただし、IDAREを利用する際には、情報の鮮度に伴う重要な変更点に注意する必要があります。これまで「海外事務手数料一律0円」を強みとしていたIDAREですが、2026年7月15日より「会員ランクに応じた海外事務手数料」が導入されることがアナウンスされています。移行後は、ユーザーの利用状況(会員ランク)に応じて手数料が変動するため、今すぐ渡タイして利用する人と、2026年7月15日以降に利用する人では、損得勘定の分岐点が変わる仕様となります。来月以降に利用する場合は、自身のランクと手数料率を事前に確認することが必須です。
また、IDAREはVisa加盟店でのショッピング専用のプリペイドカードであるため、海外ATMでの現地通貨引き出しや海外送金には対応していません。さらに、タイの地方や個人経営の屋台(PromptPayのみ対応の店)では使用できないため、これ1枚で旅行のすべてをカバーすることはできないという現実を理解しておく必要があります。

【2026最新】タイの外国人向け決済ソリューション6社徹底比較
紹介した6つの決済手段について、それぞれの特徴、コスト、PromptPayの対応状況を一覧表にまとめました。
| 決済手段 | 店頭PromptPay | 適用為替レート | 主なチャージ方法 | 最大の強み・付加価値 |
| TAGTHAi Easy Pay | ◯(一部制限有) | 銀行FXレート(5〜10%不利) | 空港ブースで外貨現金 | 観光庁公認の安心感、無料SIM特典 |
| Moreta Pay | △(法人QRのみ) | インターバンク(仲値) | クレカ / 海外銀行送金 | アプリでリモート完結、高レート |
| TrueMoney | △(高度認証要) | バーツ現金基準 | 7-Eleven店頭で現金 | タイ国内最大の加盟店網 |
| Wise | ✕(スキャン不可) | ミッドマーケット(最安) | 日本の銀行口座から振込 | ATM出金コストが最安、Grab連携 |
| Revolut | ✕(スキャン不可) | インターバンク(最安) | 日本のクレカ/デビット | アプリ内で外貨を事前キープ可能 |
| IDARE | ✕(スキャン不可) | Visa基準レート | 日本のクレカからチャージ | チャージ元のポイント二重取り |
【目的別】あなたに最適なタイのキャッシュレス決済はこれ!
タイでの決済手段は、どれか1つに絞るのではなく、自身の滞在期間や旅のスタイル、あるいはポイ活の目的に合わせて適切に組み合わせることで、利便性とコスト削減を両立できます。
ケース1:1週間以内の初めてのタイ旅行 ➔ 「TAGTHAi」+「Wise(ATM出金用)」
1週間以内の短期観光で、バンコクのナイトマーケットやローカルな屋台、地方の個人商店を巡るのが目的であれば、現金を持ち歩かない利便性を重視して「TAGTHAi Easy Pay」を導入するのが現実的です。為替レートは不利ですが、滞在期間が短く利用総額が小さければ、受ける金銭的ダメージは限定的です。また、AISの無料SIM特典が付いてくる点も短期旅行者には大きなメリットとなります。
これに加えて、カード決済が可能な中規模店やGrabの利用、およびTAGTHAiが使えなかった場合の現金バックアップ用として「Wise」のデビットカードを1枚持参する「ハイブリッド型」の運用が適しています。
ケース2:中長期滞在・デジタルノマド ➔ 「Wise」または「Revolut」
2週間以上の滞在や、ノマドワーク、コワーキングスペースの利用、中規模以上の飲食店やショッピングモールでの消費が中心となるスタイルの場合、TAGTHAiをメインにすることは推奨できません。5%から10%のレートの悪さは、利用金額が増えるほど無視できない大きな損失となるためです。
この場合は、純粋な為替コストが最安値水準である「Wise」または「Revolut」の国際デビットカードを主軸にするのが合理的な選択肢となります。移動はすべてGrabやBoltにカードを紐付けて自動決済し、商業施設やカフェでの支払いはデビットカードで行います。カードが使えないローカルな屋台や市場に対しては、WiseやRevolutを使って現地のATMから必要な分だけバーツ現金を引き出して支払うアプローチが、トータルコストを最も低く抑えられます。
ケース3:日本のクレカ修行・ポイ活をこなしつつ、タイで買い物したい ➔ 「IDARE」
ショッピングモールでの買い物、免税店、中規模以上のレストラン、配車アプリ(Grab)やオンライン通販(Lazada)など、タイ国内のVisa加盟店での決済機会が多い場合は、「日本のクレジットカードからチャージしたIDARE」に決済を集約するポイ活最適化ルートが有効です。
日本のクレジットカードを直接海外で使用すると3〜4%の海外事務手数料が上乗せされますが、IDAREを経由することで、チャージ元のポイント(例えば1.5%〜2%など)を獲得しつつ、海外決済を行うことができます(※2026年7月15日以降は、IDARE側の会員ランクに応じた手数料との損得計算が別途必要になります)。
このルートを採用する場合も、IDAREでは支払えない「PromptPayのみ対応の屋台」や「現金のみの店舗」への対策として、Wiseデビットカードを併用し、現地ATMから引き出したバーツ現金をポケットに忍ばせておく組み合わせが不可欠です。
まとめ:旅のスタイルに合わせて決済インフラを組み合わせよう
2026年現在のタイにおけるキャッシュレス決済環境は、TrueMoneyの海外クレジットカード規制や、日本のクレジットカード会社による海外事務手数料の値上げなどもあり、外国人観光客にとっては一種の過渡期を迎えています。すべての場所で1つの決済手段を完璧に通すことは難しくなっています。
最終的な判断基準は、「店頭QRの利便性(体験)」を買うか、「純粋なコストパフォーマンス」を追求するか、あるいは「日本のクレカのポイント還元」を維持するかです。
- QR決済の体験重視: スマホ1つで屋台のQRコードをスキャンする手軽さを優先するなら、為替コストを許容してTAGTHAi Easy Payを選択する。
- 純粋なコスト重視: 無駄な手数料を削減し、合理的に旅をしたいのであれば、WiseやRevolutを主軸にし、カード決済とATMから引き出した現金を使い分ける。
- ポイ活・クレカ修行重視: Visa加盟店でのショッピング総額が大きくなるなら、日本のクレカからチャージしたIDAREを活用し、現金用としてWiseを組み合わせる。
自身の旅行日程や、どのような場所で食事や買い物をするかを事前にシミュレーションし、出発前に適切なカードの発行やアプリの設定を整えて、準備をすすめてみましょう。

